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最高裁判所第三小法廷 昭和49年(オ)1125号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人竹川哲雄、同土屋博昭、同高井章吾の上告理由一について。

株式会社の設立発起人が、将来設立する会社の営業準備のため、第三者と契約を締結した場合、当該会社が、設立された後において、右契約上の権利義務を取得しうるか、その要件いかん等は、法が会社の株式引受人、債権者等の利益保護の見地に立つて定めるものであるから、会社の行為能力の問題と解すべきであり、したがつて、法例三条一項を類推適用して、右会社の従属法に準拠して定めるべきであり、原審が適法に確定したところによれば、被上告人は、ニユーヨーク州法に準拠して設立され、かつ、本店を同州に設置しているのであるから、被上告人の従属法はニユーヨーク州法というべきである。また、本件契約が上告人と被上告人との間にその効力を生ずるためには、所論のような追認を要するものでないことは、原判示のとおりである。結局、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同二について。

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はない。また、被上告人が本件仲裁契約を採用(adoption)するためには、何らの方式を要するものではなく、被上告人の採用によつて、上告人と被上告人との間に本件仲裁契約が成立したことは、明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同三について。

仲裁契約は主たる契約に付随して締結されるものであるが、その効力は、主たる契約から分離して、別個独立に判断されるべきものであり、当事者間に特段の合意のないかぎり、主たる契約の成立に瑕疵があつても、仲裁契約の効力に直ちに影響を及ぼすものではない。所論は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、三九六条、三八四条二項、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)

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